起業家インタビュー第2回 鶴見 道昭氏 [3/3ページ]
浜:私もロンドンに40年近くいますので仰っている事に全く同意です。深さが違うんですね。
鶴見:寛大さもあるでしょう。だから逆にイギリスの全てが良いわけではなく、日本の良いサービスとか日本人が良いと思うものはこちらでも良いかもしれない。色々やってみるといいと。そこにチャンスもあると思います。ま、この辺が僕がイギリスを選んだ理由なんですけれど。
浜:なるほど
鶴見:あと失敗は・・・始めてからまだ間もないし、まだやりたい事を達成もしていないので失敗も成功も言えませんが。今までやってきたビジネスの中では失敗はやってきているのでそれは良かったのかなと思っています。もちろん倒産とかはありませんが、ゼロから始めてやっています。チャレンジはこれから何度でもやってみたいなと思ってますね。自分自身が失敗してもNothing to loseなんで。
浜:失礼ですが今六十・・・
鶴見:九です。
浜:69歳でチャレンジと言う言葉が出てくるというのは素晴らしいですね。
鶴見:じゃ、日本でやろうかと言うと、こちらの方がよっぽどチャンスがあると思いますね。差別化もできるし、One of thoseになるよりは特異性をもってね。そういう意味でも有利だと思いますね。
浜:そういう意味ではまだまだ日本人でこちらでビジネスをしている方はそう多くは無いし、日本とのブリッジングをするということでもチャンスはありますね。
鶴見:今日本人はアジアや中国に向いていますが、ここは中長期的にコンスタントに、息の長いビジネスが出来るマーケットというか。日本のように流行りもないですね。わーっと始まってすっと消えてしまうということがなくて、実は僕の性に合っているんですね。
浜:アメリカのご経験も長いので他の方より比較もされやすいかと思うのですが、やはりアメリカよりも長期的に見ることが出来ると思われますか。
鶴見:そうですね。イノベーションではアメリカは素晴らしいと思いますけどね、日本を軸として見ると、アメリカと言うのはかなり反対側にあると思うんですね。ヨーロッパは、イギリスにしてもやや中間的にあると思います。ものすごく革新的でもなければ、ものすごくコンサバでもないし。流行もそこそこはあるけれどそれ程でもない。ある程度の中庸性みたいなのが好きでね。意見もそうですね。アメリカは上が右と言えば右へわっと動きますね。日本はね、これは盛田さんも言っていたんだけれども日本ってお神輿みたいなもんでね、上が具体的にこうだと言わなくてもみんな右へ左へうろうろしながらそれでも結構まっすぐ行くじゃないですか。アメリカはボートのコックスが号令掛ければその通りに漕ぐ、アメフトでも持ち分が決まっていてその通り動く、臨機応変ってのが無いですよね。
浜:命令系統がはっきりしてますね。
鶴見:そう、だからトップに頭の良い奴が居てばっと動くんですね。日本と言うのは全く逆さまで、一人一人が結構ぐちゃぐちゃ言いながら必ずしも同期していないですね。
浜:でもいつの間にか動いている。その点イギリスも結構みんなバラバラで自分のペースでやっていますね。アメリカだったらブッシュがイラクを攻めるぞと言えば結構まとまる
鶴見:ああいうパトリオットなところはアメリカはすごいですね。あれは日本が逆に無さすぎるんじゃないかと思うんだけれどね。日本に愛国心ももう少しあってもと。 アメリカで仕事をしていると、主義主張はあるけどいったん決まったら全体の流れを作りやすい。ベクトルを合わせますね。
浜:私はアメリカで仕事をしたことが無いので分かりませんがそんなに違いますか?
鶴見:それは逆に危ういところでもあってね。人の言うことをあまり聞かないことがある。
浜:誰がが言うとみんなついてゆくというのは日本的かとも思っていましたが、それはアメリカ的でもあるんですか。
鶴見:アメリカ的だと思いますね。日本もインフルエンスされやすいんだけれども、アメリカの場合は、世界のアメリカだという意絶対的価値、主義は俺たちなんだというところがありますね。という風に思っているところがあってあれってヤバいんじゃないの(笑)、って感じがね・・・。
浜:ありますよね。では最後にお聞きします。機会があれば同じことにチャレンジされますか?
鶴見:うーん、はっきり言っちゃうと全く違う人生を送ってみたいと思いますね。つまり、自分って全部の事を試したわけではないわけですね。だから意外と違うことをやったらそこはそこで何かあったんではないかなって。
浜:政治家になるとか・・・。
鶴見:そう、政治家とか、アーティストかね。
浜:ご家族に政治家、アーティストがおられるんですか?
鶴見:政治家、文学系はいるけどアーティスト系は無いですね。おふくろは大学はピアノ科だったんですが、芸術で生計を立てるのは大変だから絶対駄目って言ってましたね。
浜:文学もピアノもアート系ですよ。今日は色々有難うございました。
インタビュアー:浜哲郎 JCCI起業部会長(2010-2011) JEM Group会長
撮影日・場所:2011年5月 So Restaurant
インタビュー後記
英米の生活が三十数年に渡り、物静かな中に英国紳士を思わせる風貌。国際感覚も豊かでこれからの世代の日本人に今までの経験をもとにフィードバックしたいとのこと。色々なことにチャレンジしたいと仰る姿勢に、これからのご活躍が楽しみです。 前職ではソニーの黎明期から成長期にかけて創業者の盛田さん達から直接の陶酔を受け、まさに日本の企業の高度成長期に世界の最前線で活躍して来られています。その辺の面白いエピソードも伺いたかったのですが、今回はJCCI UKの起業家としてのお話だったのでそれはまたの機会と言うことで。